敵か、隣人か―皮膚の三つの病
前回、私たちは無菌の器ではなく、覆われた生態系だと述べた。その生態系のなかで、いちばん目に見えるのが皮膚である。皮膚は、外界と隔てる一枚の膜ではなく、場所ごとに気候の違う一つの地形だ。脂の多い額と、湿った腋窩と、乾いた前腕とでは、棲む菌の顔ぶれが違う。脂の領域にはCutibacterium(旧Propionibacterium)が、湿った領域にはStaphylococcusやCorynebacteriumが勢力を張る。同じ一人の体の上に、いくつもの異なる生態系が同居している。 ここでは、皮膚科医として日々診るありふれた三つの病―膿痂疹、にきび、アトピー性皮膚炎―を通して、この生態系と菌との関係が、どこで、どのように変わるのかを見ていく。この三つは、並べる順そのものが一つの論証になる。菌との関係が、外からの侵入から、内なる均衡の乱れ、そして生態系そのものの崩壊へと、段階を追って移っていくからだ。 まず、膿痂疹。俗にとびひと呼ばれる病である。 これは、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)や化膿レンサ球菌(Streptococcus pyogenes)とい