論考
免疫レジリエンスとは何か(前編)
「免疫力を上げる」という言葉が、街にあふれている。食品の棚にも、健康記事の見出しにも、どこでも見つかる。そこには一つの素朴な前提がある。免疫とは力であり、力は強いほどよい、という米国的な前提である。だが臨床の現場に立つ者は、これに違和感を感じる。強い免疫がそのまま健康を意味するなら、医師の仕事の少なからぬ部分は説明がつかない。 考えてみたい。花粉のような本来は無害な相手に、涙と鼻水で激しく応戦してしまうのがアレルギーである。自分自身の組織を外敵と取り違えて攻撃してしまうのが自己免疫疾患である。ウイルス感染への反応が暴走し、守るべき臓器まで焼き尽くしてしまうのがサイトカインの嵐(cytokine storm)である。これらはいずれも、免疫が足りないのではなく、強すぎる―正確には、出力を制御できていない―ことから生じる病だ。免疫を一本の強弱の軸の上に置き、その軸を上へ上へと押し上げることが健康だとする見方は、ここで早くも行き詰まる。上げた先にあるのは、しばしば病のほうなのである。 行き詰まりは、もう一段深いところにもある。そもそも「守る」という働き自体が、一つではない。免疫学が長く中心